事例制作ログ

事例の制作・活用に関するアレやコレ、かなり雑談

ディレクターの仕事(1)~スタッフの力を引き出し、クライアントを納得させる

      2015/10/20

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アーキテクチャーでは現在5人のディレクターで年間140本~150本の導入事例をプロデュースしています。1つの事例は約2500字~3000字ですから、文字数にすると45万字!結構なボリュームの文書をさばいていることになります。しかしながら社内にはライターはいません。すべて、信頼のおけるフリーランスのライターの方に、お仕事を依頼しています。単純にコストだけを考えれば、社員としてライターを抱えた方がよさそうに思えますが、実はそうではありません。また、社内にライターやデザイナーを持たない「ディレクターカンパニー」として成り立っているのも、訳があるのです。

 

高品質な事例の制作はまず最適なスタッフィングから

そのうち人工知能が発達すれば、ロボットが事例原稿を書いてくれる日がくるかもしれません(笑)。しかし現実には、ユーザーの本音を引き出すライターの「取材テクニック」や、最終的な読者に的確に伝える「文章力」は欠くことができません。そこで重要になるのが、取材を行う前、つまり「どのライターにどの事例を書いてもらうか」というスタッフィングです。ディレクターの仕事は多種多様にありますが、このスタッフィングのセンスは、事例制作を継続させる上で非常に重要です。

新しいプロジェクが決まると、以下のような要件に基づいてディレクターはライター選びを始めます。

  • 導入製品・サービスをよく理解しているか。あるいは、予習によって理解できるか
  • 原稿のトーンが、クライアントのニーズ、嗜好にマッチしているか
  • クライアントが納得する”取材パフォーマンス”が現場で発揮できるか
  • 制作費とギャラが見合うか

では、それぞれについて説明していきたいと思います。

 

クライアントとの「相性」が結構大事!

まず「①導入製品・サービスをよく理解しているか。あるいは、予習によって理解できるか」は、当然ですね。ITを全く知らないライターを、クラウドサービスの取材に使ったりすれば、質問も原稿もちんぷんかんぷんになるのは目に見えています。まずこの条件で、適任のライターを絞り込みます。

次に「②原稿のトーンが、クライアントのニーズ、嗜好にマッチしているか」というのは、「文体」のことです。実はライターさんはそれぞれ独特の「文体」があり、ディレクターとして慣れてくると、文章を読んだだけでライターの癖を読み取り、誰か書いた原稿かすぐに当てられるようになります。例えば体言止めの多い人、特定の表現、締め文句を多用する人、などなど、本当に様々です。また、文章の「勢い」についても、導入効果をドラマチックに書く、脚色の上手な人や、事実をつぶさに拾って、時系列で述べていくのが得意なライターもいます。

もちろん、どの文体が正解と言うことはなく、クライアント企業がこれまで制作してきた他のツールとの整合性や、クライアント担当者の「好きな」文体かどうかなどで、アサインするライターを決定します。事例原稿はある種「食べ物」の側面があり、原稿が美味しければリピートオーダーになりますし、まずければ、2回目の受注がない、というのは当たり前の世界なのです。なので、ディレクターは常に優秀なライターを求めています。アーキテクチャーでは現在10数名のそうしたライターさんのネットワークで事例を取材制作しています。

 

ライターの”取材パフォーマンス”って何??

「③クライアントが納得する”取材パフォーマンス”が現場で発揮できるか」については、ちょっと耳慣れないですね。これは、取材時のライターの言動を指します。質問を矢継ぎ早にするライター、逆に、あまり質問を投げず聞き役に回るライター、「それはいいですね!」「どうしてそんなことが可能なんですか?!」など、リアクションがうまいライターなど、取材時のライターの”パフォーマンス”も十人十色です。一方でクライアント側も「もっと質問してほしい」「ライターがしゃべりすぎ」「もっと取材相手をのせてほしい」など、要望が出てきます。

こうなってくると、ディレクターの仕事はある種芸能プロのマネージャーに近くなってきます。取材現場が一番盛り上がり、クライアントが気に入る人選で苦慮するのです。逆に、前述の「文体」も、「取材パフォーマンス」もばっちりハマった場合、事例制作全体のプロセスが安全かつスムーズに進むのはもちろん、リピートオーダーでライターの知見も蓄積されていくため、「取材すればするほど品質が良くなり、制作プロセスが効率化される」というプラスのスパイラルに入ります。

そして「④制作費とギャラが見合うか」は言わずもがな・・・ですね(笑)。こればかりは、時としてどうにもならないことがあります。

 

ライターから上がってきた生原稿は、そのままでは出せない理由

ほとんどの場合、取材後(だいたい1週間)であがってきた事例原稿を、そのままクライアントに出すことはしません。ここからが、ディレクターの仕事の第2幕です。具体的には、以下のような仕事が待ち構えています。

  • まず、原稿の文字数が最終的なフォーマットに合っているか(文字が多すぎたり少なすぎたりしないか。”お客様略歴”など必要な要素が抜けていないか)
  • 原稿の用字用語がクライアントのルールに合っているか(よくある例では「サーバー」なのか「サーバ」なのか。と言った表記ゆれの統一)
  • 同時に、単純な誤字脱字がないか
  • 取材前後にクライアントと”約束”した、事例において強調すべきポイントが的確に盛り込まれているか。(想定していたストーリーになっているか)
  • 原稿に冗長な表現や、重複した表現がないか
  • 「導入後、生産能力が●倍」などの数字について、自分のメモと齟齬がないか
  • 当たり前だが、取材対象者の肩書きや氏名に間違いがないか(取材時の名刺と突き合せて確認)

微細なチェック事項は他にもありますが、少なくとも上記の点はディレクターがチェック/修正した上で、初めてクライアント提出用の原稿になります。必要に応じて、一旦ライターに原稿の修正を戻したり、時間がない場合にはディレクター自身で書き直したりもします。

 

ディレクターの仕事は品質の安定とクリアなコミュニケーションの維持

「原稿のルールなんてライターがチェックすればいいじゃん」と思われるかもしれませんが、腕のいいライターは常に複数のクライアントの原稿を担当しています。クライアント毎のルールを守れ!とオーダーするよりも、事例としての本質、文章の構成や表現の工夫に注力してもらうのがあるべき姿です。

逆に、「事例を世に出すための仕上げ」をディレクターが担うことによって、事例原稿を複数の目でチェックする監査の役割を果たせ、事例原稿の品質を安定させることができます。また、不意の病気などで、いつものライターさんが取材に対応できない時も、ディレクターの采配で他のライターさんに「これまでのお作法」をレクチャーし、取材に穴をあけないように対応することもできます。

そして、実はこれが一番かもしれませんが、クライアントとライターの間にディレクターが立つことによって、双方の言い分のギャップを吸収し、スムーズな修正依頼や、的確な修正対応が初めて実現するのです。ですので、腕の立つディレクターは、クライアントから「あのライターの原稿はダメだ!」と言われたり、ライターから「この修正指示は納得できない!」と言われたりしても、冷静に本質を捉え、双方を納得させる指示や会話を怠りません。

このように、事例制作はスタッフの「総力戦」です。バランスの取れた制作チームは、クライアントからも信頼され、継続的・安定的な事例制作に結びつきます。今回はお話に出ませんでしたが、デザイナーやカメラマンさんも同様に、「パフォーマンス」「相性」を考えながら、ディレクターは常にスタッフィングに頭を悩ませているのです。

 

今回のポイント

  • 事例制作成功の第一歩は、最適なスタッフィングから。そこがディレクターの腕の見せ所
  • クライアント担当者との「文章の相性」「取材パフォーマンスの相性」を見極める
  • クライアントと制作スタッフの、事故のないスムーズなコミュニケーションを取り持つのが優秀なディレクター

この記事を書いた人

きたみー
きたみー
導入事例制作一筋10年以上。アーキテクチャーの代表もやってます。
未来の野望は映画監督と港で釣り人相手のラーメン屋台開業。

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